未承認国家ソマリランドは危険か、治安調査と観光のため入国する女
アフリカ,  ソマリランド

未承認国家ソマリランドは危険?治安や宗教、ビザは?謎の国の実態調査レポ

アフリカのツノと呼ばれる位置にある未承認国家ソマリランド。紛争の末ソマリアから独立したものの、国家承認している国がないため、国際的にはソマリアの一部。けれど、独自の政治と通貨を持ち、事実上は独立しているという、たいへん位置づけが難しい独立国家です。

今回は、そんな謎に包まれたソマリランドを訪れたときの実体験を元に、どんな国なのかリアルを紹介していきたいと思います。

ソマリランドの基本情報

未承認国家ソマリランドは危険か、治安調査と観光。ハルゲイサの学校で子どもたちに囲まれた女

人口:ソマリランドの推定人口は約450万人(2023年時点)。
首都:ハルゲイサ(英: Hargeysa アラビック:هرجيسا)
言語:主要な言語は ソマリ語 と アラビア語。また、英語も行政や教育、ビジネスの場で使用されることが多いです。
宗教:ソマリランドの住民のほぼ全員が イスラム教(スンニ派) を信仰しています。
時差:ソマリランドは 東アフリカ時間(EAT) に属しており、協定世界時(UTC)より +3時間 です。夏時間(DST)は適用されません。
通貨:ソマリランドでは ソマリランド・シリング(SLSH) が使用されています。ただし、米ドルも広く流通しています。
気候:ソマリランドは 乾燥帯のステップ気候(BSh)で、暑く乾燥した気候が特徴です。年中暑い日が多く、雨季は年に2回、春(3月~5月)と秋(9月~10月)にわずかに雨が降ります。沿岸部は非常に暑く、内陸部は若干涼しいです。
国際的立場:ソマリランドは1991年にソマリアから一方的に独立を宣言した自治的な地域ですが、国際的には未承認のままです。独自の政府、通貨、国境管理を維持しています。

ソマリランドのビザを取得

未承認国家ソマリランドは危険か、治安調査と観光。ソマリランドのビザ。
Togwuchalie, Harerge, Ethiopia

ソマリランドへ行くにはビザがいります。ソマリランドのビザは、正式国家ではないため世界で9カ国にしかない連絡事務所でビザ申請することになります。
私はエチオピアで申請したのですが、謎の国家なのでどれだけビザ審査が厳しいのだろうと思っていたら、写真は2年前のショートカットのものでもすんなりOK、滞在先を決めてなくてまごついていたら、受付の人が「Hotelって書いとけばいいわよ」といって、さっさと書いてくれてびっくり。そんな適当でいいんかい!とつっこみたくなるくらい適当でした。そして翌日には無事発給。

ところが、受け取ったビザを見ると、国籍にChineseと書かれているではありませんか!申請書も適当でよかったですが、ビザ発給も適当でした。(笑)
そして、Chineseと書かれたビザの訂正は、Sorry〜と修正液で塗って書き直しただけ。
ちゃんと入国できるのか、入国するまで不安でしかたなかったです。涙

Embassy of Republic of Somaliland
住所:XQVQ+6MP, Addis Ababa, エチオピア
公式サイト:http://somalilandgov.com/
電話:+251116635921
ビザ申請費:100USドル 現金のみ ※カード不可、他の通貨不可
受付時間:非常にルーズで規則性がないので、つど問い合わせが必要です。

ソマリランドへいざ入国!イミグレーションは?

未承認国家ソマリランドは危険か、治安調査と観光。イミグレーションの様子

ソマリランドへはエチオピアから陸路で、歩いて入国しました。到着したのはソマリランドの国境の町Wajaale。
修正液で直されたビザのせいで緊張しながら入国したものの、イミグレもめちゃテキトーな上に超ウェルカムムード満載。一気に拍子抜け・・
入国者も私と旅友Danayの2人だけで、みんな大盛り上がり。
椅子出してくれるわ、コーヒー飲む?と聞いてくれるわ、入国審査中の様子を写真撮っていいよーっと。^ ^; え?いいの??まじ!
しまいには、これソマリランドのお金〜って審査官が5000シリングくれた…
こんなアットホームなイミグレは、113カ国目にして初めてでした。
謎の独立国家とか、怖いんじゃ?とネガティブなイメージが強かったのですが、入国したとたん、その不安は一掃されました。

ソマリランドの通貨は?

未承認国家ソマリランドは危険か、治安調査と観光。ハルゲイサのマーケットで両替商をする男と山積みの紙幣
Hargeysa, Woqooyi Galbeed, Somalia

ソマリランドの通貨は自国通貨のソマリランド・シリング (Somaliland shilling)。Slshと略します。 5000、1000、500、100、50、20、10、5シリング紙幣がありますが、5000、1000はあまり使用されていません。レートもあってないようなもので、ソマリランド銀行が発表する公式為替レートは、最近では1アメリカ合衆国ドルにつき580 Slsh前後に落ち着いていますが、20年前は4,500 Slshだったそうです。
それを聞いただけでもめちゃくちゃなことがわかりますよね。

小口紙幣は、なかなか嵩張るのであまり持ちたくはない、しかし、街中で使う分には大きな紙幣ではおつりがないと言わることがほとんど。なので、需要はどうしても小口紙幣になってしまいます。

未承認国家ソマリランドは危険か、治安調査と観光。ハルゲイサのマーケットで両替商をする男と山積みの紙幣

その結果、見よ!この街角の両替屋さん、現金山積み!両替屋も道端で現金山積みにしてても平気なくらい平和なんですよ、ソマリランド。
50ドル両替しただけで札束2つほど!しばしミリオネ気分を楽しみます。

とはいえ、旅してて困るのはやはり両替。空港とかでは大きなお札で渡されたり、夜遅いとしまってたりで、バスやタクシーに乗れない!と困ることも多し・・。外貨両替マネーバンクは、ネットで依頼、小口や小銭への両替も可能で、書き留めで送ってくれるので楽&お得に両替できて送料も無料!外貨両替は日本でやっておきましょう!

ソマリランドの治安は?

未承認国家ソマリランドは危険か、治安調査と観光。ハルゲイサの建物
— ソマリランドで唯一エレベーターのある建物 場所: Hargeysa, Woqooyi Galbeed, Somalia

街は全体的に外国人ウェルカムムード。どこでも「写真?いいよー」という感じで気軽にOKしてくれます。写真撮るというと、怒るかお金をくれと言われることの多いアフリカではかなり珍しい対応です。

危険だからドライバーとソルジャーをセットで雇って行動しなくてはいけないという指令はほぼ意味がない状況。百聞は一見にしかずとはまさにこのこと。先ほどのずらっと並ぶ両替屋さんのむき出しの札束をみていても納得できます。
誰もお金を持って逃げようなんて考えないんだろうなあ、というほどのんびり。というか、店先の山積み札束を全部持って逃げても、多分全部で10万円にもならないくらいでしょうか。大荷物のわりには上りが少ないので、やる気もなくなるのかもしれません。(笑)

未承認国家ソマリランドは危険か、治安調査と観光。ハルゲイサにある戦闘機のモニュメント
ソマリアから独立するためにたくさんの方が犠牲に。
町の中心には、ソマリランドを襲ったソマリアの戦闘機がモニュメントとして飾られています。

そんな感じで2週間の滞在中、街の中を1人で歩いていても、郊外にいるときも、怖いと思うことは一度もありませんでした。離れたところでソルジャーが見守ってくれているからかもしれませんが、人の醸し出す雰囲気に、殺伐としたものは感じられず、笑顔で迎えてくれる人たちばかりの印象です。

本家ソマリアでは先月もテロがありたくさんの犠牲者が出ていますが、ソマリランドがソマリアから独立し、争いのない国づくりを成功させている姿をソマリアも見習うべきだと思いました。
国際社会もソマリランドの残してきている結果を考慮して国と認めてあげて欲しいと思ったりもしますが、そういう国が世界には数多く存在しているため、ここを認めてしまうと、世界のあちこちの国の秩序が乱れてしまうとのこと…
この意見には残念ながら、納得せざるを得ませんでした。

ソマリランドの食べ物

ハルゲイサ観光 ソマリランドの食べ物 ラクダ料理 アフリカ文化

ソマリランドの食文化は、地理的、歴史的にいろいろなところの影響を受け、実にバラエティ豊か。
伝統的な遊牧民料理のシンプルで栄養価の高い料理から、イスラム文化やインド洋の交易ルートを通じて伝わったスパイスを使った料理まで、さまざまな食材が用いられます。

ソマリランドの名物

主食はお米で、バスティ(長粒米)がよく使われます。他にも、隣国エチオピアの影響を受けた「インジェラ(Injera)」も人気です。しかし、これは酸味のある発酵したパンのようなもので、日本人には苦手な人も多いようです。

以下は、実際に食べてみておいしかったソマリランドの代表料理を紹介します。
ラクダ肉:ラクダはソマリランドの伝統的、かつ遊牧民たちに必要不可欠の重要な存在。ラクダの肉は高価で特別な日や祝祭でよく使われています。厚切りにされたラクダの肉をスパイスでマリネして焼くことが多く、ジューシーで風味豊かな味わいが特徴です。
他にも、にんにくやクミン、コリアンダーといったスパイスを使い、トマトベースでゆっくりと煮込んだラクダシチューも美味です。

ふだんは羊肉やヤギ肉を食べることが多く、ファハー(Faahfaah)という羊肉やヤギ肉を野菜やスパイスといっしょに煮込んだ香り高いシチューはまさに国民食。それぞれの家庭やお店で味が違い、外れもほぼないので食べ比べしてみるのもおすすめです。また、ソマリランドの沿岸地域では、魚介類も豊富に獲れるため、新鮮な魚を使った焼き魚やシーフードカレーが美味しかったです。

サンブーサ(Sambusa)は三角形のサクサクしたパイで、中にひき肉や野菜、スパイスが詰められています。ラマダンの時期やお祭りの際に特によく食べられ、ソマリランドのストリートフードとしても人気です。町中の屋台で、シナモンやカルダモンが加えられた香り高いシャヒ(Chai)という伝統的なミルクティーと一緒に食している人たちをたくさんみかけました。
また、ラクダミルクは栄養価が高い上に消化も良く、健康にいいため遊牧民の間でよく飲まれています。飲んでみましたが、思ったほど癖はなく飲めるミルクでした。(笑)

ソマリランドの食事のマナー

伝統的に、食事は床に座って手で食べることが多く、特に右手を使って食べるのが一般的です。食事は家族や友人とシェアすることが重要視されています。


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ソマリランドの日常生活

ソマリランドの生活の様子 ごみごみしたところで働く男 治安 ハルゲイサ観光  アフリカ文化

謎に包まれてたソマリランドの人々はどのように暮らしているのでしょうか。ここでは、観光地ではなく、リアルで生活する人々をの暮らしぶりを紹介させてもらいます。

ソマリランド首都:ハルゲイサの生活

ソマリランドの首都であるハルゲイシャでも、街は雑然としていて一部の地区以外はほとんどトタンやテントのような家。つぎはぎだらけの小さな家に家族みんなで住んでいる、というのがほとんどでした。表通りの一角だけがコンクリートのキレイな家で、経済格差が大きいことが見てとれます。

ソマリランドの働く子どもたち 治安 ハルゲイサ観光 アフリカ文化
— 場所: Hargeysa, Woqooyi Galbeed, Somalia

町の平和で人々も親切、しかし、やはり貧困層は多く、町中で働く子どもたちもたくさんいます。
町中心のモニュメントの周りには、靴磨きをしたりピーナッツを売ったりする子供たちがたくさん…
独自通貨に価値がないため、この状況を打破するのはソマリランドの力だけでは不可能です。ソマリランドが安定した平和を保つためには、国際社会の援助が必要だと思います。

ソマリランド郊外:遊牧民の生活

ハルゲイサを出ると、どこまでも道のないサバンナが続きます。いえ、道は一応うっすらとはあるように見えるのですが、舗装されていないため、少しでも道を外れて走ってしまったら、と考えるとぞっとします。GPS様様な世界です。
そして、サバンナをひたすら走り続けると、なぜか2~3時間おきに、なぜここで?というような場所に遊牧民の集落が点在しています。写真のように、布や服で覆ったテントのような家がポツンポツンと固まっているんです。
電気水道ガス、まったくなし。水を買えるお店屋さんもなし。どうやって暮らしているのでしょうか。

マリランド の観光で行った遊牧民の家に住む男。アフリカ文化 ハルゲイサ

移動の途中、1件のお家にお邪魔させてもらうと、素敵な家長さんがいらしゃいました。
話しを聞くと、羊を放牧しながら暮らしているとのこと。たまに買い出しに行くそうですが、ほとんどは自給自足をしているようでした。
とにかく水が貴重なので、子どもたちは空のペットボトルでもいいから欲しいと言ってねだります。
ペットボトル入りのジュースなんてほとんど飲むことはないんだろうなと思います。
厳しい環境の中で暮らしているのに、迎えてくれた家族のみんなが穏やかで笑顔だったことが深く心に残っています。

未承認国家のパスポート

ソマリランドの観光 海賊のいる海岸線  アフリカの家族
アデン湾のビーチで寛ぐ家族 対岸は内戦の止まないイエメン

未承認国家の人たちって、パスポートはどうなるのだろうと、ずっと疑問でした。
ソマリランドにも、国際的に効力を持たないソマリランドのパスポートはあるそうですが、結局、海外へ出るためにはソマリアパスポートを取らなくてはいけないのだそうです。
しかもソマリランドからソマリアへは陸路が封鎖されているため空路でしか行き来が出来ません。
また自国通貨があるものの、国際社会では認可されていないため、国外ではソマリランドシリングはただの紙切れ。
結果、海外に出られるソマリランドの人々はごく限られた人のみということでした。

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ソマリランドの基本情報まとめ

ソマリランドの治安調査と観光で入国する2人の女。

ソマリランドは、人々は平和に暮らしていますが、決して裕福とはいえない国です。
ですが、海賊やテロで荒れているソマリアに比べて安定した治安を保ち、ソマリアと自分たちは違うというプライドがあちこちで感じられました。
争わずに平和に暮らしたいと願う人々の未来に暖かい光が降り注ぐことを祈らずにいられません。
思いがけず好きな国のひとつになったソマリランド。みなさんも、ぜひ訪れてみてください。

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