
サウジアラビアの秘境アシール地方へ|断崖の村アル・ハバラとサウダ山の絶景
目次
Toggleサウジアラビアと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、果てしなく続く砂漠や、近未来的な高層ビルが並ぶ大都市の風景かもしれません。けれど、この国の南部には、そうしたイメージを静かに裏切る場所があります。
旅の終盤、最後の訪問地として選んだのは、サウジアラビア南部・アシール地方。
ここで出会ったのは、乾いた砂の世界とはまったく異なる、霧に包まれた高地と緑の風景、そして断崖にへばりつくように残る、かつての人々の暮らしの痕跡でした。
この記事では、サウジアラビアの“秘境”とも言えるアシール地方を舞台に、高原リゾート・サウダ山と、断崖の村アル・ハバラを中心に紹介していきます。
アシール地方の観光MAP
アシール地方は、サウジアラビア南西部に広がる山岳エリアで、緑の高原や断崖に築かれた集落など、砂漠のイメージとは異なる風景が特徴です。
この記事で紹介する、Al HabalaやSoudah、Abha、Al Yanfaは、このアシール地方に点在する見どころのひとつ。
同じアシール地方にあるリジャル・アルマア(Rijal Almaa)は、石造りの家々が美しく残る歴史的な村。別記事で詳しく紹介しているので、アシール地方の魅力をさらに深く知りたい方は、ぜひあわせて読んでみてください。
サウジアラビア最後の訪問地、南部・アシール地方へ

今回の旅でアシール地方を訪れたのは、サウジアラビア滞在の終盤でした。リヤドやジェッダで見てきた砂漠や都市の景色とは、空気感からしてまったく違います。
標高が高く、気温は穏やか。場所によっては霧が立ち込め、視界がゆっくりと開けていく——そんな風景に、「本当に同じ国なのだろうか」と思わずにはいられませんでした。
サウジアラビアの多様性を、もっとも強く実感したエリアでもあります。
サウジアラビアのより詳しい見どころや実際に訪れてよかったスポットは、
▶サウジアラビア観光おすすめランキング|行ってよかったスポット21選のまとめ で紹介しています。
サウジアラビアの高原リゾート Soudah(サウダ山)

サウダ山(Jabal Soudah)は、標高3,000m級の山々が連なるサウダ山脈にある山の1つで、標高3133mを誇り、サウジアラビアの最高峰といわれています。(諸説あり)
眼下に広がるのは、茶色の大地ではなく、深い緑と断崖、そして雲。夏でも涼しく、霧が流れ込むことも多いため、サウジ国内では避暑地・高原リゾートとして知られています。
この「涼しさ」と「緑」は、サウジアラビアの中ではかなり特異な存在です。
アシール国立公園(Asir National Park)

サウダ山一帯は、アシール国立公園として整備されており、展望スポットや散策路が点在しています。断崖の縁に立つと、はるか下まで切れ落ちる地形と、そこにかかる雲が織りなす景色を楽しむことができます。
また、野生動物のハマドリアス・ヒヒが生息しており、その姿を見ることも可能。
サウダ山そのものが、この地域の物語を語る「舞台装置」のように感じられました。
サウジアラビア南部・断崖の村アル・ハバラ(Al Habala)

この旅の中でも、もっとも印象に残った場所が、断崖の村アル・ハバラです。サウダ山からほど近い場所にありながら、その存在はとても静かで、ひっそりとしています。
断崖の村アル・ハバラ(Al Habala)とは

アル・ハバラは、垂直に近い断崖の途中に築かれた集落跡です。サウダ側の高地から見下ろすと、岩壁に小さな建物が張り付くように残っているのがわかります。
一見すると、人が暮らしていたとは信じがたい場所。しかし、ここには確かに人々の日常がありました。
断崖に現れるAl Habalaの集落跡

初めて断崖の中に現れる集落跡を目にしたとき、言葉を失いました。自然の地形と人工物の境界が曖昧で、村が岩山の一部になっているように見えます。
風の音と、遠くの景色だけが広がる中で、かつての生活の気配だけが静かに残っていました。
なぜ、こんな場所で人は暮らしていたのか

アル・ハバラがこのような立地に築かれた理由の一つが、防衛です。外敵や部族間抗争が頻発していた時代、容易に近づけない断崖は、集落を守るための天然の要塞でした。
加えて、山岳地帯に暮らす部族社会では、土地や水源をめぐる争いも少なくありませんでした。断崖の中腹という立地は、外部からの侵入を防ぐだけでなく、集落の存在そのものを目立たなくする効果もあったと考えられています。
安全と引き換えに、物資の運搬や移動の不便さを受け入れる——そんな選択の積み重ねが、この断崖の村を形づくっていきました。
Al Habala Tourist Park & Cable Car

現在では、高地側にアル・ハバラ・ツーリストパークが整備され、そこからケーブルカーで断崖下へ降りることができます。
かつては命綱のようなロープでしか行き来できなかった場所へ、今は数分で安全にアクセスできる。その体験自体が、過去と現在を一気につなげる装置のように感じられます。
断崖の途中に残る住居跡を上から眺めると、人々がどれほど過酷な環境と向き合ってきたのかが、視覚的にも伝わってきます。
「Habala(ロープ)」が支えていた生活

アル・ハバラという名前は、「ロープ」を意味する言葉に由来しています。かつてこの村では、断崖の上と下を結ぶ唯一の手段がロープでした。
食料や生活物資は、ロープを使って慎重に引き上げられ、人の移動も同じ方法に頼っていました。日常生活そのものが、常に危険と隣り合わせだったことが想像できます。
20世紀後半になると、生活環境の改善や安全面の理由から、住民たちは次第に高地側や周辺地域へ移住していきます。現在、アル・ハバラは無人の集落跡となり、断崖に残された建物だけが、かつての暮らしを静かに語っています。
現在のケーブルカーと、かつてのロープ。技術は大きく変わりましたが、人がこの断崖と向き合ってきた歴史は、確かにつながっています。
静かに残るアシールの建築(Al Yanfa Archaeological Village)へ

アル・ハバラとはまた違った形で、アシール地方の建築文化を感じられるのが、Al Yanfa Archaeological Village です。
リジャル・アルマアを思い出す石造りの村

Al Yanfa Archaeological Village に残る石造りの建物群は、アシール地方を代表する伝統建築の一つです。山岳地帯で入手しやすい石を積み上げ、暑さや寒さの両方に対応できる構造が特徴です。
リジャル・アルマアと同様に、複数階建ての建物が密集して建てられており、集落全体が一つの防衛空間として機能していました。ただし、Al Yanfa はより小規模で、生活の場としての色合いが強く残っています。
共通するのは素材と構造、異なるのは立地と集落の広がり方。それぞれが、この土地の地形や気候条件に合わせて進化してきたことがわかります。
壁に残る横縞模様の意味

建物の壁に見られる横縞模様は、単なる装飾ではありません。石と土、漆喰などを層状に重ねることで、構造を補強し、雨水の侵入を防ぐ役割を果たしていました。
また、この横縞模様は、アシール地方特有の美意識を表す要素でもあります。集落ごと、家ごとに微妙に異なる模様が施され、装飾性と機能性が自然に融合していました。
厳しい自然環境の中で培われた建築技術は、単なる遺構ではなく、この土地に生きた人々の知恵そのものとして、今も静かに残っています。
高地の街 アブハ(Abha)で感じた「今」の暮らし

アシール地方の中心都市アブハは、観光地というよりも、人々の生活が自然に営まれている街という印象が強く残りました。
市場で買い物をする人、家族で食事を楽しむ姿、夕方になると少し冷えた空気の中を歩く人々。そこには、特別な観光演出はなく、ごく当たり前の日常があります。
雲が低く垂れ込める日には、街全体が霧に包まれ、まるで空に手が届きそうな感覚になることもありました。
断崖の村アル・ハバラで感じた「過去」と、アブハで見た「現在」。同じ高地にありながら、時間の層がはっきりと対照的に浮かび上がります。
アシール地方旅行のベストシーズン

アシール地方を訪れるベストシーズンは、春(3〜5月)と夏(6〜9月)です。
この地域は標高が高いため、サウジアラビアの他地域とは異なり、夏でも比較的涼しく過ごせます。特に夏季は霧が発生しやすく、サウダ高地では雲に包まれた幻想的な風景を見ることができます。
一方、冬(12〜2月)は朝晩の冷え込みが強くなるため、防寒対策が必要です。高地ならではの寒暖差を考慮し、重ね着できる服装がおすすめです。
アシール地方への行き方

アシール地方の玄関口となるのは、アブハ国際空港(Abha International Airport)です。リヤドやジェッダなど、サウジ国内主要都市から国内線が運航されています。
空港からサウダ高地やアル・ハバラへは、レンタカーまたはタクシーでの移動が一般的です。山岳地帯のため、公共交通機関は限られており、時間に余裕を持った移動計画が重要になります。
アシール地方旅行の注意事項

アシール地方は比較的安全で穏やかな地域ですが、いくつか注意しておきたい点があります。
- 高地のため、天候が急変しやすい。霧や雨で視界が悪くなることがあります。
- 断崖や展望スポットでは、足元に十分注意すること。
- 夏でも朝晩は冷えるため、軽い防寒具があると安心です。
- 観光地化されていない場所も多く、飲料水や軽食は事前に準備しておくと便利です。
- 自然と歴史が色濃く残る地域だからこそ、無理のない行程と安全意識を大切にしたい場所です。
Lapinの旅行記:アシール地方編

サウジアラビア最後の訪問地は、南部アシール地方。
サウジアラビア最高峰の3000mを誇るスダ山(Mt. Soudah)、断崖絶壁の上に立つアル・ハバラの空中村 (village of Al Habala)、そして地下道の上にある村、アル・ヤンファ(Al Yanfa)。
アシール地方は、大きな山々と豊かな植物が自慢。北部の砂漠地帯とは全く異なるサウジアラビアの別の顔。

アシール国立公園には、ハマドリアス・ヒヒの群れが生息し、雄々しくて美しいを風景を眺めながら楽しめるウォーキングトレイルがたくさん。山好き、トレッキング好きにはたまらない場所。
でもちょっと・・元々なのか、ヒヒの仕業なのか、道路脇のあちこちにゴミがいっぱいなのが残念。そして、ハマドリアス・ヒヒたちの根性が座ってるっていうかなんというか・・車が真横スレスレで通っても、デンと構えて不動。

アル・ハバラ(Al Habala الحبلة)の空中村は、約400年前にカフタン族によって建てられたもの。縄ばしごで登るしかなかったこんな村は、この広いサウジアラビアでも唯一ここだけだといいます。
どこの国にも、「なんでここ?」というところに暮らす人たちがいて、歴史や伝統が存在します。それを紐解くのが好き。

アル・ヤンファ(Al Yanfa Archaeological Village قرية آل ينفع الاثريه)は、伝統的な作りの石の家が並ぶ、まるでおとぎ話に出てくるような村。
天井の低い迷路のようなトンネルを抜けながら、不思議の国に迷い込んだような気持ちになりました。

ここを築いてきた人たちの過去から続く香りと遺物が漂う空間。
最後の最後に、「ガイドブックに載っていないサウジアラビア」を見れたようでちょっと優越感(笑)

前日のリジャル・アルマアもそうでしたが、アシール地方は一般的に想像するようなサウジアラビアとは全く違う雰囲気を持つエリアでした。
印象深く、好きな場所です。

歩き回ったサウジアラビア。どこを訪れてもそれぞれの魅力があり、感動と驚きの連続だった3週間。サウジアラビアにこんなところもあったんだ、っていう嬉しい発見をたくさんできました。
これからどんどん観光客が入ってきて、すごい勢いで変わっていくのではないかと懸念もあります。今あるミステリアスな雰囲気が壊れませんように。
楽しい旅の時間をありがとうございました。またいつか。
サウジアラビアの秘境アシール地方のまとめ

サウジアラビアには、砂漠や近代都市だけでは語りきれない、意外な一面があります。南部アシール地方で出会った高地の風景と断崖の村は、そのことを強く印象づけてくれました。
旅の最後にこの地を訪れたことで、サウジアラビアという国の奥行きと余韻が、静かに、しかし深く心に残りました。
時間に余裕があれば、ぜひ訪れてみてください。
※当記事の情報は実際に旅した際の体験と、調査時点の情報をもとに執筆しています。可能な限り正確を期していますが、万が一情報に誤りや更新漏れがある場合は、お手数ですが「https://tabilapin.com/contact/」よりご連絡いただけますと幸いです。確認の上、迅速に対応・修正いたします。
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