
シュンドルボン国立公園旅行記|クルナ発バングラデシュの世界遺産・マングローブの森へ
目次
Toggleクルナ(Khulna)を拠点に、バイクとボートをチャーターして向かったシュンドルボン国立公園。
朝靄の中を走り抜け、やがて世界最大のマングローブの森が広がり始めると、町の喧騒はすっと背後に遠ざかっていきました。
目当てにしていたベンガルトラやイリエワニには会えなかったものの、しんとした森の奥から響くサルの声、警戒しながら水辺を渡るシカ、そしてガンジス川の支流で暮らす人々の姿こそ、この旅の大きな見どころでした。
水上での商い、家の前に停められた小舟、潮の満ち引きに合わせて行われる独特の漁法——デルタ地帯に根付く人々の“日常”は、想像していたよりずっと力強く、美しいものでした。
シュンドルボン国立公園(Sundarbans National Park)とは

シュンドルボン国立公園(Sundarbans National Park ※サンダーバンズと呼ばれることもあり)は、バングラデシュ南部からインド西ベンガル州にかけて広がる世界最大級のマングローブ林。ユネスコ世界遺産にも登録されています。
無数の川と支流が入り組む広大なデルタ地帯で、塩分を含んだ水の流れに合わせてマングローブが複雑に根を張り、独特の生態系が成立しています。
この地域はベンガルトラの重要な生息地として世界的に知られていますが、実際には遭遇率は非常に低く、森の静けさそのものを味わう場所といえます。また、シカ(スポッテッドディア)、猿、カワウソ、無数の水鳥など、豊かな野生動物が暮らしています。

さらに特徴的なのが「水辺とともに生きる人々」の存在です。潮位や川の流れを読みながら行う漁、干満に合わせて移動する小舟、川辺に寄り添う家々——生活のすべてが水と直結しています。
観光では野生動物観察に加え、こうした水辺文化や“人の営み”に触れられる点も大きな魅力です。
シュンドルボン国立公園行き方と基本情報
クルナからは車で2時間、バイクで1時間半ほど。そこからボートに乗り換えて森を進みます。奥深くまで行くには2泊3日ほどの船旅が必要ですが、近場の散策であれば、日帰りでも可能です。
旅行の準備に役立つバングラデシュの基本情報(治安・通貨・ビザなど)は、
▶バングラデシュってどんな国?治安や歴史など旅行前に知っておきたい基本情報 に詳しくまとめています。
シュンドルボン国立公園体験レポ
シュンドルボンの玄関、クルナへ

クルナは世界遺産にもなっているシュンドルボンという世界最大のマングローブの森があるところ。猿、ワニ、鹿、タイガー、アナコンダと野生の動物、鳥もたくさん生息するデルタ地帯に広がる美しい森。
事前情報があまりつかめず、現地に行けば何とかなるだろうと無計画でクルナまでやってきたものの、ツアーを探しても行き方を探しても、旅友を探しても何もみつからず。ここでも外国人、観光客らしいのは私だけ。
人気がないのか?オフシーズンだからなのか?
仕方がないので自力で公共バスで行こうと計画を立てていると、タイガー出るよ、とホテルのオーナーが心配してくれてボディーガードをつけてくれました。
そして、公共バスは本数が少ないからと、そのボディガードがバイクで連れてってくれるようにその交渉まで!
なんとありがたい。

このオーナーさん、いろいろと世話を焼いてくれて、陸路では買えなかったSIMカード(この辺りでは、バングラデシュの身分証がないと売ってくれなかった)を、その人名義で買ってくれたり、おやつくれたり、本当にいい人。
日本で働いてたこともあって、日本が大好きらしいです。なんか本当にいい人にしか出会わないこの強運に感謝。もちろんであった人々にも深く深く感謝。
クルナから森の入り口へ——バイクで向かった朝

そしてシュンドルボンへの旅の始まりは、クルナのまだ薄暗い早朝から。
エンジン音が静かな街に響きわたり、オーナーが手配してくれたボディガードのバイクがホテル前に到着。
思ったよりもごつくない。本当にタイガー出てきたら守ってくれるのかな??(笑)
道路沿いの茶屋では、すでに湯気の立つチャイを飲む人々の姿。バイクはゆっくりと市街を離れ、やがて舗装の甘い道へと入っていきます。
両脇の田園風景が少しずつ湿地帯の景色へ変わり、空気が重く、潮の匂いが濃くなっていくのが分かりました。
森そのものはまだ見えないのに、近づいている実感だけは確かにある——そんな時間が続きます。
ボートに乗り換えて、静寂のシュンドルボンへ

川沿いの小さな集落に到着すると、すでにチャーターした木造ボートが待っていました。
エンジンがふわりと震え、水面が揺れると同時に、川の景色は一気に広がります。ボートが支流へ入るころ、周囲は徐々に緑一色に。マングローブの根が水面から蜘蛛の足のように突き出し、川幅が狭まるにつれて音が消えていきます。

鳥の羽ばたき、遠くの猿の鳴き声、そして船底を叩く小さな波音だけ。
森というより、ひとつの巨大な“生命の器”の中に入り込んだような感覚でした。
出会ったのは、森の小さな住人たち

期待していたベンガルトラやワニには結局めぐり会えなかったものの、動物たちは思った以上にすぐ近くにいました。
水辺で草を食むスポッテッドディア(シカ)。
枝の上を忙しなく飛び回る猿の群れ。
鋭い声を上げて飛び立つ鳥たち。
とくに印象的だったのは、静寂の中でふいに現れる野生動物の“気配”でした。姿は見えなくても、森の奥から何かがこちらをじっと見ているような、あの独特の緊張感。森が生きていることを実感する瞬間でした。
デルタの水辺で暮らす人々の姿

支流から外れて大きな川に戻ると、景色は再び人の生活の気配を帯び始めます。
川岸には高床式の家が並び、家の前には小舟が横付けされ、子どもたちが水遊びをしていました。
潮の満ち引きに合わせて動く生活は、時間そのものが自然とつながっているように見えます。

途中、大きな網を振る女性漁師の姿も。
潮位を見極めて魚が通る“道”を読み、川の流れを利用する独特の漁法だと船頭が教えてくれました。
その手際が驚くほど静かで、無駄がなく、長くこの土地で暮らしてきた人だけが持つ知恵のように感じます。
森を抜けたあとの、言葉にならない余韻

森の影が薄れ、再び開けた川へ出たとき、風の匂いがはっきりと変わりました。
シュンドルボンを離れる寂しさと、あの静けさがもう戻らないという感覚。目には見えないけれど、確かに“ひとの営み”と“自然の巨大な循環”が重なり合っている
——そんな世界の片隅に触れた気がしました。
トラには会えなかった。
ワニもいなかった。
それでも、水辺に生きる人々の姿や、森に漂う緊張と静けさ、そこに確かに存在する命の気配こそ、この旅でいちばん残った景色です。

丸1日、シュンドルボンをほぼ独り占めで楽しみましたが、今回は近場のみ。
本当は海に繋がるところまで2泊3日ぐらいかけて行くと最高に綺麗とのこと。
最も過少評価されている世界遺産ともいわれているここは、ぜんぜんがっかりじゃなかったです。最高地点まで行けなくても感慨深い場所でした。
穴場で本当にお勧めです!
いつかまた、この森の深くを目指すために訪れたいなと思います。

The Sundarbans of Bangladesh
From India to Bangladesh. The Sundarbans of Khulna has the beautiful forest of one of the world’s largest mangroves. Here is a world heritage.
Special thanks★
お客として以上に心配りをしてくれたKhan Azizur Rahman
ボディーガードをしてくれたMd Shibly
Really thanks! See you again!
写真で見るシュンドルボン国立公園とデルタ地帯










デルタ地帯の暮らしぶりは興味深いものでした。バングラデシュの人々は、いつも笑顔が絶えず、力いっぱい生きるという前向きなパワーを感じる人たちばかりでとても好きです。
もっと詳しくバングラデシュの観光についてを知りたい方は、
▶バングラデシュ観光で行ってよかったスポット9選!世界遺産やモデルコースを詳しく紹介 の記事もチェックしてみてください。
シュンドルボン国立公園訪問時の注意

シュンドルボンは自然環境が厳しく、天候や潮位によって状況が大きく変わります。訪れる際は、まず信頼できる船頭やガイドを手配することが重要です。
マングローブ地帯では GPS が不安定になりやすく、水路を熟知した現地の案内人が欠かせません。また、野生動物への接近は禁物で、特にベンガルトラやワニが生息する地域では、安全距離を保つことが求められます。
虫除けや日差し対策、飲み水の確保など、基本的な備えも忘れずに。雨季は増水で航行できないことが多いため、乾季の訪問が安心です。
シュンドルボン国立公園観光のまとめ

クルナから向かったシュンドルボン国立公園の旅は、トラやワニに出会えなかったとしても十分に心に残るものでした。
水面に映るマングローブの影、森の奥から聞こえる動物の声、そして川とともに生きる人々の静かな生活。華やかな観光名所とは異なる、自然と暮らしが溶け合う世界に触れられたことが、この旅の大きな収穫です。
広大な森の静寂に身を置くことで、自然の奥行きと、人がその一部として生きる姿の美しさを改めて感じられる場所でした。
バングラデシュ体験記シリーズ
行く先々が珍道中で楽しい経験をしています。ここも同じく、忘れられない場所となりました。
その他のバングラデシュの体験記もぜひチェックしてみてください。
◆バングラデシュ体験記
※当記事の情報は実際に旅した際の体験と、調査時点の情報をもとに執筆しています。可能な限り正確を期していますが、万が一情報に誤りや更新漏れがある場合は、お手数ですが「https://tabilapin.com/contact/」よりご連絡いただけますと幸いです。確認の上、迅速に対応・修正いたします。
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