
ヴィアンデン城を訪ねて|ルクセンブルク北部の古城と静かな町を巡る旅
目次
Toggleルクセンブルク北部、ドイツ国境に近い小さな町ヴィアンデン(Vianden)は、深い森とウール川(Our River)に抱かれた静かな場所。その町を見下ろす丘の上にそびえるのが、ルクセンブルク屈指の名城として知られるヴィアンデン城(Château de Vianden)。
首都ルクセンブルク市から日帰りで訪れることができるにもかかわらず、そこには中世の空気が色濃く残り、時間がゆっくりと流れています。
北部の自然豊かな風景やお城を巡る旅は、ルクセンブルクという国の奥行きを実感させてくれるものでした。
ヴィアンデン城とは

ヴィアンデン城は、11世紀から14世紀にかけて段階的に築かれた中世城塞で、ロマネスク様式からゴシック様式への建築の変遷を見ることができる貴重な存在です。
もともとはローマ時代の要塞跡に建てられ、のちにヴィアンデン伯爵家の居城として発展しました。神聖ローマ帝国との関わりも深く、一時はヨーロッパ有数の規模と格式を誇る城だったそうです。

しかし17世紀以降、城の役割は次第に失われ、フランス革命後には資材として売却されるなど荒廃が進みます。19世紀にはほぼ廃墟同然の状態となり、城は長い間忘れられた存在となりました。
転機が訪れたのは20世紀後半。ルクセンブルク大公家の主導により大規模な修復が始まり、歴史資料をもとに忠実な復元が進められます。

現在のヴィアンデン城は、その修復の成果としてよみがえった姿であり、中世の騎士の間や礼拝堂、居室などを見学できる博物館として一般公開されるまでに至りました。
1997年には上皇上皇后両陛下も招かれてここを訪れたことがあるそうです。
ルクセンブルクの首都と郊外を巡るモデルコースは、▶ルクセンブルク観光モデルコース!実際に歩いて選んだおすすめルートを日数別で紹介 で紹介しています。
ヴィアンデン城の行き方と基本情報

ヴィアンデン城は、ルクセンブルク北部の町ヴィアンデンに位置しています。ルクセンブルク市からは無料の公共交通機関でアクセス可能です。
もっとも一般的なのは、ルクセンブルク中央駅(Gare Centrale)または市内中心部から電車とバスを利用する方法。AVLやRGTRの路線バスでエテルブリュック(Ettelbruck)まで行き、そこからヴィアンデン行きのバスに乗り換えます。
所要時間はおおよそ1時間30分〜2時間ほど。ヴィアンデンのバス停から城までは徒歩で約10〜15分、緩やかな坂道を登ったところにあります。
出発前の予備知識をまとめた▶ルクセンブルクってどんな国?治安や歴史など旅行前に知っておきたい基本情報 もあわせてご覧ください。
ヴィアンデン城の旅ログ
私が行った4月のときの旅の様子を紹介します。
オフシーズンでひとが少なく、のんびりと過ごせました。
ルクセンブルク市からヴィアンデンへ

電車とバスを乗り継いでルクセンブルク市からヴィアンデンへ。
車窓に映る緑が濃くてゆったりのんびりした田園風景に癒されながらの移動。しかも無料。
何をしたらこの田園と渓谷ばかりの自然にあふれた国が裕福になるのか少し不思議。
町から見上げる城の姿

ヴィアンデンの町に到着すると、まず目に飛び込んでくるのが、丘の上に堂々と構えるヴィアンデン城の姿。カラフルな家並みと川の流れ、その背後にそびえる城のコントラストは絵画のようで、思わず足を止めて見入ってしまいます。
中世の時代にタイムスリップしたような感覚に、足取りも弾みます。

ルクセンブルクシティからヴィアンデンまでは日帰りも可能ですが、私の場合はここを拠点に北部を旅する予定で2泊しました。
お城の近くにホテルを取った場合、坂道×石畳なので、スーツケースだと少し大変です。
城内見学で感じる中世の暮らし

荷物をホテルに置いて、早速お城へ。
観光客はあまり見当たらず、自分以外に3組くらい。人が少ない方が嬉しいけれど、お城は広くてときどき薄暗い不気味な部屋もあるので、適度にいてくれた方が本当は安心。

城内に入ると、広間や武器庫、礼拝堂などが順路に沿って公開されています。石造りの空間はひんやりとしており、当時の人々がどのような環境で暮らしていたのかが想像できます。

特に高い天井を持つ騎士の間は圧巻で、城が政治と権力の象徴であったことを実感しました。
城壁からの眺め

城の上部テラスや城壁からは、ヴィアンデンの町とウール川、そして北部の森が一望できます。
天気の良い日には遠くまで見渡すことができ、自然と城が一体となったこの場所の魅力を強く感じました。
ケーブルカーで別角度からみるヴィアンデン城

町の端っこ、ヴィアンデン城の北側にケーブルカーが行き来しているのを発見していってみることに。
スキー場にあるようなリフトがあったので早速のってみます。人もほとんどいなくて待ち時間0。

眼下にウール川を見下ろしながらぐんぐん登っていきます。すごく気持ちよいです。ヴィアンデンの旧市街をまるっと眺めることが出来る絶景!
頂上ではカフェと展望台があり、ヴィアンデン城を見下ろせるナイスビュー。カフェにはビールもあったのでヴィアンデンの美しい景色を眺めながら乾杯★

帰りも待ち時間0。帰りは歩いてヴィアンデン城まで行くことも可能。トレイル(Vianden Viewpoint hiking trail)を歩いて約1㎞、20分ほど。ここは穴場です!
ケーブルカー料金:大人 往復 9.00 € 片道 6.50 €
公式サイト:https://www.visit-vianden.lu/en/attractions/vianden-cable-car/
ヴィアンデン城周辺の見どころ
ヴィアンデンの街は1日あれば十分周れます。
町のどこからでも見上げればお城。いろいろな位置からのお城ビューを楽しみながら街歩きしてみてください。
ヴィアンデン旧市街(Vianden Old Town)

城の麓に広がるヴィアンデン旧市街は、小さいながらも散策が楽しいエリア。
石畳の道沿いにはカフェやレストラン、土産物店が並び、観光地でありながら落ち着いた雰囲気が保たれています。

川沿いを歩くだけでも心地よく、城観光の前後に立ち寄るのにちょうど良いスポットです。
ウール橋(Ourbrücke)下のテラスでは、オープンカフェでホットワインやコーヒーも楽しめるので、散歩途中の休憩にもぴったりです。
トリニタリア教会(Trinitarierkirche / Église des Trinitaires, Vianden)

ヴィアンデン旧市街の一角に佇むトリニタリア教会は、17世紀にトリニタリア修道会によって建立された歴史ある教会です。
外観は控えめながら、内部に入ると落ち着いた空間が広がり、静かな街の中でより一層の静けさに包まれます。

かつて捕虜解放を使命とした修道会の精神は、この町の歴史とも深く結びついており、ヴィアンデンが宗教と文化の交差点であったことを感じさせる場所でもあります。
お城や旧市街散策の合間に立ち寄ることで、旅により深い奥行きをもたらしてくれるでしょう。
ヴィクトル・ユーゴー記念館(Victor Hugo House)

フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーが亡命中に滞在した家は、現在記念館として公開されています。
館内では彼の作品や当時の生活を紹介する展示を見ることができ、ヴィアンデンが文化人にも愛された町であったことがわかります。
ヴィアンデン城とは異なる角度からこの町の歴史に触れられるスポットです。
ウール渓谷(Our Valley)

ヴィアンデン周辺に広がるウール渓谷は、ルクセンブルク北部を代表する自然景観のひとつ。ハイキングコースが整備されており、川沿いや森の中を歩きながら静かな時間を過ごせます。
お城観光とあわせて自然を楽しみたい人におすすめです。
その他、ルクセンブルクの各観光スポットの情報は、▶ルクセンブルクひとり旅|観光してよかったおすすめスポットと楽しむコツ で紹介しています。
あわせてチェックしてみてください。
ヴィアンデンのホテル事情と宿泊のポイント
ヴィアンデンは小さな町なので、大型のホテルはほとんどなく、部屋数も少なめなため、ハイシーズンには早めの予約が必須。
価格帯は比較的良心的で、スタンダードなホテルであれば1泊中価格帯が中心。城が見える部屋や川沿いの客室など、立地を重視した宿を選ぶと、滞在そのものが旅の思い出にななります。
ルクセンブルクからは日帰り観光も可能ですが、夕方以降に観光客が減った静かな町を歩けるのは、宿泊者ならではの魅力。日程があえばぜひ宿泊してみてください。
ホテル選びや空室状況の確認には、複数の宿をまとめて比較できる予約サイトの利用が便利。特に週末や夏季は満室になりやすいため、旅程が決まったら早めに予約しておきましょう。
ルクセンブルク北部を旅して

Ettelbruk、Diekirch、Vianden、Bourscheid、Clervaux、・・
交通費タダじゃなかったら出向いてなかったかもしれない美しい場所との出会いに感謝する時間を過ごしました。
トレッキングやお城巡り、いろいろ楽しめることの多かった北部の旅。もっともっと時間をかけて、もっともっと深堀したい国。

歩くたびに目に入る景色が本当に美しくて、ため息ができるほどの毎日。
私が訪れたのは、ベストシーズンにまだ早い4月でしたが、少しずつ花々が芽吹きだし、あちこちで目を楽しませてくれました。

深く知れば知るほど魅力が出てくる国。人も本当に優しかったです。
ルクセンブルク、1回とりあえず行っておけばいいか、と、その程度に思っていましたが、機会があればまた訪れたい国になりました。
いつまでも国も人の心も豊かでいてね。
Pray for peace in Luxembourg
ヴィアンデン城観光のまとめ

ヴィアンデン城への旅は、ルクセンブルク北部の魅力を凝縮した体験でした。
中世の歴史を今に伝える城そのものの迫力はもちろん、城下町の穏やかな空気、周囲に広がる森と渓谷の風景が、訪れる人の心を静かに満たしてくれます。
首都から日帰りで行ける距離にありながら、まるで別の国に来たかのような感覚を味わえるのも、この場所ならでは。
ルクセンブルクの多面的な魅力を知るために、北部のヴィアンデン城はぜひ訪れてほしい場所のひとつです。
※当記事の情報は実際に旅した際の体験と、調査時点の情報をもとに執筆しています。可能な限り正確を期していますが、万が一情報に誤りや更新漏れがある場合は、お手数ですが「https://tabilapin.com/contact/」よりご連絡いただけますと幸いです。確認の上、迅速に対応・修正いたします。
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