沿ドニエストル共和国の教会
モルドバ,  ヨーロッパ,  沿ドニエストル共和国

【未承認国家】沿ドニエストル共和国を旅して|感じたことや行き方など現在の情勢まとめ

モルドバ東部に位置する 沿ドニエストル共和国(トランスニストリア/Transnistria) は、1990年に独立を宣言して以降、いまもなお国際的には承認されていない「事実上の独立地域」として存在しています。

旧ソ連時代の雰囲気を色濃く残しつつ、独自の政府・軍隊・通貨を持ち、特殊な政治状況が続く謎の未承認国家。

今回は、その不思議な国の“現在”をわかりやすく紹介します。

沿ドニエストル共和国の基本情報

未承認国家沿ドニエストル共和国

正式国名:沿ドニエストル共和国(Transnistria / Приднестровская Молдавская Республика)

位置:東ヨーロッパ、モルドバ東部、ドニエストル川沿岸の細長い地域

時差:UTC+2(夏時間で +3) — 日本よりマイナス約7時間(季節により異なる)

首都:ティラスポリ(Tiraspol)

国旗:赤・緑・赤の横三色帯に鎌とハンマー、星(ソ連時代のモチーフを継承)

人口:おおよそ 50万〜60万人(正確な統計は困難)

言語:主にロシア語、モルドバ語(ルーマニア語系)、ウクライナ語 — 多言語社会

通貨:沿ドニエストル・ルーブル(Transnistrian ruble) — 国際通貨ではないため流通に制限あり

宗教:主に正教会(ロシア正教)が多数。キリスト教文化が中心

コンセントタイプ:ヨーロッパ標準タイプ C / F(丸ピン2本)

沿ドニエストル共和国の大使館情報

沿ドニエストル共和国の教会

沿ドニエストル共和国は、多くの国から未承認状態であるため、日本にも正式な大使館や公邸は存在していません。そのため、通常の国のような「在日大使館」は存在しません。

ただし、沿ドニエストルを目的地とする場合、モルドバを通過して行く必要があるため、モルドバ共和国大使館の情報は「間接的なサポート先」として把握しておくのが安全です。

在モルドバ日本国大使館

住所:73/1, Stefan cel Mare Blvd., MD-2001, Chisinau city, Republic of Moldova
電話:+373-22-23-3380
公式サイト:https://www.md.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html

駐日モルドバ共和国大使館

住所:〒162-0806 東京都新宿区榎町72−番地 神楽坂榎ビル3階
電話: 03-5225-1622
公式サイト:https://japonia.mfa.gov.md/en

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沿ドニエストル共和国のビザ

沿ドニエストル共和国のバス乗り場
ティラスポリ(Tiraspol)のバス乗り場

沿ドニエストル共和国を訪れるにあたり、 事前にビザを取得する必要はありません

いわゆる「観光ビザ」を発給することはなく、 到着時に国境で発行される簡易な「入域カード(migration card / entry card)」 を受け取る、という形になります。

ただし、入域には「パスポート(国際旅券)」が必要です。EU や米国、日本など多くの国籍の人にとって、パスポートが有効であればビザは不要、という扱いになります。

沿ドニエストル共和国の場所と行き方

沿ドニエストル共和国の地図

沿ドニエストル共和国へは、まずヨーロッパの主要都市(たとえばキシナウ(モルドバ)やウクライナの首都キエフなど)を経由するのが一般的です。日本から直行便はなく、通常は乗り継ぎでキシナウまで向かい、そこからモルドバ国内の交通手段を使って東へ向かいます。

キシナウからティラスポリまではバスまたはミニバス(マルシュルートカ)が運行されており、所要時間はおおよそ 1.5〜2時間。国際的に承認されていない地域のため、パスポートと身分証明の携帯が必須、また入域が制限される場合もあるので、渡航前に最新の情勢をチェックするのが望ましいです。

なお、ビザについてはモルドバ経由であっても「未承認地域」であることから、モルドバのビザ取得=沿ドニエストル入域を保証するものではない点に注意が必要です。状況によっては入域を断られる可能性もあるため、計画は慎重に行いましょう。

自力で行くことは簡単ですが、不安な人はモルドバのキシナウからツアーで行くことも選択肢のひとつです。

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沿ドニエストルを訪れる際の実際の流れ

モルドバから沿ドニエストル共和国へ行くバスのりば
モルドバのバス乗り場

日本 → 欧州のどこか(例:ドイツ、ルーマニアなど)経由 → モルドバ共和国の首都 キシナウ へ入国

キシナウでパスポートチェックおよびモルドバ入国(モルドバ側の要件を確認)

キシナウからバスまたはミニバスで国境検問(モルドバ ⇔ 沿ドニエストル間)へ移動

国境でパスポート提示、入域カード(migration / entry card)を受け取り、滞在先住所と滞在日数を申告

沿ドニエストルで観光・滞在。出国時には入域カードを提示して出国手続き

この流れは「一般的かつ比較的シンプル」ですが、渡航前に モルドバのビザ・入国条件・パスポートの有効期間、および 沿ドニエストルの最新情勢 を確認するのがおすすめです。

注意点・ビザとは異なる「特殊な入国制度」

沿ドニエストル共和国の入境カード

沿ドニエストル共和国は 国際的に承認された国家ではないため、通常の国のように「大使館でビザ取得 → 入国」という流れはありません。あくまで「入域カードによる暫定的な入国手続き」が基本です。これは、制度的にも、法律的にも“特殊な扱い”です。

たとえモルドバ本土で有効なビザ(あるいはビザ免除)であっても、それだけで沿ドニエストルへの入域を保証するものではない、という説明もあります。

また、旅行前には最新の情報を確認することが強く推奨されます。というのも、地域の政治状況や検問の運用が変わる可能性があるからです。

沿ドニエストル共和国の立場と政治状況

沿ドニエストル共和国の公園に建てられた銅像

沿ドニエストルは国際的にはモルドバの一部とみなされていますが、実際には独自の政府が行政を行い、独立国家のように機能しています。住民の多くはロシア語話者で、政治的にも経済的にもロシアとの結びつきが強い状態が続いています。

地域内にはロシアの「PKO」(平和維持部隊)が駐留しており、これが沿ドニエストルの事実上の安全保障になっています。一方で、モルドバ本土との関係は不安定ながらも断続的な協議を続けており、緊張と安定が交互に訪れる独特な状態が続いています。

治安と社会の雰囲気

沿ドニエストル共和国の建物

沿ドニエストル内部の治安は比較的安定していますが、国境や検問所での手続きは厳格で、域外との移動や情報は強くコントロールされています。政治的な自由は限られ、国内のメディアは政府寄りの報道が主流です。

とはいえ、日常生活は落ち着いており、ティラスポリ(実質的首都)では市場、レストラン、学校、病院などが通常通り機能しているため、外部の印象よりも「生活は普通に続いている」という声も聞かれます。

ウクライナ情勢の影響

沿ドニエストル共和国にある戦車のモニュメント

2022年以降のウクライナ情勢により、この地域は非常にセンシティブな位置に置かれています。沿ドニエストルはウクライナと国境を接しているため、軍事的・外交的な影響を受けやすく、国境管理はこれまで以上に厳しくなっています。

また、モルドバ本土はEU加盟を進めている一方、沿ドニエストルはロシア寄りという構造が強まり、“東西の狭間にある地域”という状況は以前よりも鮮明になっています。

沿ドニエストル共和国の経済状況

未承認国家沿ドニエストル共和国

経済はロシア支援と一部の大企業によって支えられています。ロシアからのエネルギー供給に依存しており、独自通貨「沿ドニエストル・ルーブル」を発行していますが、国際的に使えるものではありません。

また、輸出入はモルドバ本土経由で行う必要があることが多いため、経済は常に不安定さを抱えています。

沿ドニエストル共和国内での移動

沿ドニエストル共和国を走るバス

沿ドニエストル共和国内での移動は、想像以上にシンプルで旅しやすかったです。

主要都市の間には路線バスやマルシュルートカ(乗り合いミニバス)が頻繁に走っており、ティラスポリからベンデルやドゥボサリなどへも比較的簡単に移動できます。運賃はとても安く、地元の人と同じ感覚で気軽に利用できます。

一方で、英語表記や英語を話せるスタッフは多くないため、行き先名をロシア語表記で控えておくと安心。

また、地域の特性上、警察や検問に遭遇することもあるため、パスポートと入域カードは常に携帯しておくことが重要。タクシーも利用できますが、流しより配車アプリやホテル手配のほうが安全で確実です。

沿ドニエストル共和国を旅行する上での注意点

沿ドニエストル共和国の公園

沿ドニエストルは観光地ではありませんが、「旧ソ連の雰囲気が残る地域」として興味を惹かれることもあります。ただし、旅行には以下の点に注意が必要です。

  • 国境検問での手続きが厳しい
  • 状況が変化しやすく最新情報が必須
  • 領事支援が受けにくい可能性がある
  • 写真撮影禁止エリアが多い

訪問自体は可能な時期もありますが、情勢が不安定な地域であることを理解しておく必要があります。

Lapinの旅行記:沿ドニエストル共和国編

未承認国家沿ドニエストル共和国の小学校
小学校

未承認国家沿ドニエストル共和国で改めて国について考えました。

国とか国籍の意味を今まで深く考えたことがありませんでした。「領土・国民・主権」が揃い、国際的に承認されて初めて独立した国家と言われます。

現在多分、国連加盟国が193国。日本が承認している国が196国
※日本は国連加盟国の北朝鮮のことは承認していません。

国連加盟国が1つ以上承認している国が7か国。

国連非加盟国の承認のみが2か国 

誰からも一切承認されていない、勝手に国を主張しているのがソマリランド共和国1か国。

合計すべてを国として承認したとすると203か国がこの地球上に存在しています。
**と、思ってますが間違ってたらすみません。

沿ドニエストル共和国のバスの時刻表
バスの時刻表

台湾が国際的に国として認められていないのは有名な話で不思議な話。

国連加盟国がたった21か国しか承認しておらず、震災時に一番助けてくれたにもかかわらず日本も台湾を国として承認していません。

中国への建て前上いろいろあるのだと思いますが、国の定義を考えると変な話と思わずにいられません。

モルドバから沿ドニエストル共和国へ行くバスの車内
モルドバのキシナウ~ティラスポリ間のバス

沿ドニエストル共和国は国連非加盟国のみが承認している2か国のうちの1つ。未承認国家なんていうと、怖いイメージもありましたが、ビザなしで10時間以内の滞在なら許されるということで行ってみました。

想像と違い、行ってみると普通にみんな穏やかに暮らしていました。

イミグレーションでは秒数まで書かれた入国からきっちり10時間の紙を渡され、この時間以内に失せな!的なことを言われましたが問題なく入国。

沿ドニエストル共和国からモルドバへ行くバスのチケット売り場
ティラスポリのバスチケット売り場

生まれる親や国は選べない、とよく話にありますが、生まれてしまえばそこに愛着がわくもの。日本はさておき、戦火にある国でも被災した場所でも、そこで生まれ育った人々は、そこに戻りたいという望郷の念があるものだと思います。

沿ドニエストル共和国の公園の遊具

チェルノブイリの人たちもそうでした。東ヨーロッパを旅している間中ずっと、怒涛の流れの中、併合と独立を繰り返し、苦しみもがきながらも自国の旗を守りぬいてきた歴史とプライドを感じています。

沿ドニエストル共和国の公園の遊具

日本でも昔は国旗を地面にふれさせてはいけないといわれてましたが、今そういう意識を自発的に持つ人はどのくらいいるでしょう。時々思うのは、日本人は日本人であることを誇りに思っている人が多いと感じるのに対して、日本に対して本当の愛国心を持っている人はどのくらいるのだろうなと考えます。右翼左翼の話ではなく・・。

沿ドニエストル共和国のレストラン
PEACE FLAGにメッセージを書いてくれるマスター

うまくいえないのですが、日本人であることにただあぐらをかいている人も多いと感じるということ。国を何とかしようと思うより、国が何とかしろよと思う人のほうが多いような気がしています。(自分も含め)

このほそーい沿ドニエストル共和国の人たちと話をしていて感じました。国って「領土・国民・主権」だけではなく国民の愛がないと国は育たないものだなあと。

沿ドニエストル共和国に住む人々

小さな国。未承認の国。不便もたくさんあると思います。パスポートとか国益とか保障とかいろんな大変な問題があるはずなのに、それでも独立してその国を選ぶ人たちの愛国心と笑顔に、自分が問われているようでした。「国をどのように愛していますか?」 って。

国からしてもらうこと。国に望むこと。ここの人たちからはそういうことの前に、国とともに生きる、という強い意志を感じました。国のためにすること。

この国の人たちは、この国が生きやすいからここにいるのではなく、ここが好きだからここにいて、その愛が強いから独立出来たのだなと思います。こことは全く国の状況は違うけれど、私もそういう強さをもって日本を愛せているかな?と考えさせられました。

未承認国家沿ドニエストル共和国の町中にある道しるべここは世界目線ではモルドバの一部。でもここに入るにはモルドバの人もパスポートをみせて入国します。未承認??承認している行動に思われます(笑)ここでも本音と建前があるのですね。きっと。

モルドバと沿ドニエストル共和国の関係は緊迫しているようには感じませんし、 国境はあるもののみんな自由に行き来しています。

沿ドニエストル共和国の教会私目線では沿ドニエストル共和国を国として承認します。国を愛する心と国に対するプライドを感じたから。モルドバもいい国でした。沿ドニエストル共和国もいい国でした。

両国が納得し、両国民が平和に幸せに暮らせるよう祈ります。

Pray for peace between the two countries.

旅がもっと楽しくなる情報を、こちらでまとめています。

未承認国家沿ドニエストル共和国のまとめ

未承認国家沿ドニエストル共和国

沿ドニエストル共和国は、国際的に承認されていないものの、独自の制度と通貨を持つ「事実上の国家」として存続しています。

現状は大きな変化こそないものの、ウクライナ情勢やモルドバのEU加盟方針など外部要因に影響を受けやすく、今後も緊張と安定が混在した状態が続くと見られています。

一般旅行者にとっては慎重な情報収集が必須の地域ですが、独特の歴史背景や社会構造に興味がある人にとっては、非常に特徴的な場所です。

この国の平和が続くことを心から願っています。

※当記事の情報は実際に旅した際の体験と、調査時点の情報をもとに執筆しています。可能な限り正確を期していますが、万が一情報に誤りや更新漏れがある場合は、お手数ですが「https://tabilapin.com/contact/」よりご連絡いただけますと幸いです。確認の上、迅速に対応・修正いたします。

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