
バレンツブルグ旅行記|ロシア文化が息づく極北の街!行き方・見どころ・ツアー紹介
目次
Toggleバレンツブルグ(Barentsburg)は、スバールバル諸島(Svalbard)の中でも「突然ロシアへ来たような旅気分」を味わえる独特のエリアです。
北極圏(Arctic Circle)の冷たい海に沿って位置し、現在もロシア語表記やソ連風の建築物が残っています。
今回、ロングイェールビーン(Longyearbyen)滞在中にフェリー利用のツアーで訪れました。
流氷を超え、氷山を超え、海上に姿を現したバレンツブルグの風景は少し荒廃した雰囲気が漂いとても印象的。他では感じられない異国の空気に包まれました。
バレンツブルグの観光MAP
Barentsburg(バレンツブルグ)とは

バレンツブルグは、スヴァ―ルバル諸島の第二のコミュニティで、ロシア炭鉱会社が運営する小さな街です。
街全体がコンパクトにまとまり、海沿いにソ連風の記念碑や巨大壁画、レンガ調の集合住宅群が並びます。

人口はおよそ400名ほどと言われ、観光客向けのホテル、バー、郵便局も小規模ながら整備されています。小さなギフトショップも町の入口にありました。
極地の気候でありながら、人の生活感が可視化されている点が大変興味深い場所です。
バレンツブルグの歴史

バレンツブルグは1920年代に炭鉱産業によって開発されたエリアです。 時代によってオランダ、中国など複数国がこの炭鉱権を所有しましたが、最終的にロシアの企業Arktikugolが採掘を続けてきました。
ソ連時代の象徴物が複数残存しており、文化の空気感がそのまま凍結されたような印象があります。炭鉱そのものは縮小傾向で、近年は観光が新たな産業として注目されています。
バレンツブルグへの行き方

バレンツブルグへ行く手段は、フェリー、スノーモービル、ヘリの3手段のみ。
ロングイェールビーンからはフェリーツアーとスノーモービルでいくツアーが出ています。ほとんどのツアーは日帰りですが、ホテルもあるので宿泊も可能。

年間通して安定した運行ができるので、おすすめはフェリー。船上では海氷や野生動物を観察しながら移動します。
夏季は比較的運航本数が多い印象ですが、気象状況は変化しやすいため、前日・当日の運航確認は必須です。
バレンツブルグの見どころ
ロシア統治下の入植地ということで、どんなところなのだろうと思っていましたが、実際に降り立つてみると、想像よりもこじんまりとしていて放置された町、取り残された町という印象を受けました。
街の中心部は徒歩移動で問題なく回れ、短時間でも別世界感をしっかり感じ取ることができます。
①Barentsburg Hotel(バレンツブルグホテル)

バレンツブルグホテルは街の中心側に位置し、宿泊者だけではなく、日帰りで観光に来た人たちでもロビーやバー利用が可能です。館内に入ると、木材の温かみとロシアの伝統的なインテリアが相まって、北極圏にいながら遠い東欧へワープしたような余韻があります。
壁には歴史的な写真やポスターが貼られており、眺めていると炭鉱時代の雰囲気が想像でき、その時代にタイムスリップしていく感覚に。
その視覚の情報量の豊かさが、バレンツブルグ観光の楽しさの一つともいえます。
②Lenin Statue(レーニン像)

バレンツブルグ中央付近の広場に立つレーニン像は、このコミュニティを象徴する存在です。周囲を囲む建物と海が背景に重なり、北極圏の静寂と政治的象徴性が一体化した独自の景観を作り出します。

レーニンの胸像の背後には「われわれは共産主義を目指す」の文字。像自体は大きくありませんが、視界に入ると風景全体の記号性が一気に強まります。
「過去に人が国家の夢を抱いた場所で、今は旅人が静かに北極海を見ている」という時間の重なりを強く感じました。写真撮影の人気スポットで、ツアー客の多くが必ず立ち寄ります。
③Murals & Wall Art(壁画アート)

バレンツブルグの建物には巨大な壁画アートがいくつも描かれています。ソ連期を想起させるプロパガンダ風のデザインもあれば、炭鉱労働や北極動物をモチーフにした作品もあり見応え十分。視覚的なインパクトが強く、街歩きをしているだけでギャラリー巡りのように楽しめます。

ガイドの説明によると「炭鉱から観光にシフトする中でアートが街の表現に変化を与えた」とのこと。
それを聞いて改めて眺めてみると、壁画は単なるアートではなく、バレンツブルグが変化の途中であることを示すドキュメントのようにも感じられてきます。
④Barentsburg Church(バレンツブルグ教会)

バレンツブルグ教会(Barentsburg Church)は、バレンツブルグの高台側に位置し、木造の温かみを感じる外観と尖塔が印象的な小さな教会です。
外壁の木材は極北の乾いた空気に合わせたシンプルな造りで、無駄な装飾を排した静けさが風景に合っています。

内部に入ると、空気が一段階落ち着き、壁に飾られた小さなイコンの光沢が控えめに視界へ届きます。観光地的な華やかさではなく、生活の中の祈りをささやかに受け止める空間であることが伝わってくるようでした。
この教会の庭からは港や対岸の雪山などの絶景をみることができます。
⑤Main office of ArcticUgol(ロシア国営炭鉱会社ArcticUgol本社)とMain entrance to the coal mines(鉱山入口)

バレンツブルグの中心部にある「ArcticUgol」の本社建物は、この街の存在理由を象徴する場所です。ここは単なる企業オフィスではなく、世界最北の領事館として知られている、ロシア領事館(Russian Consulate)も内部に置かれています。
政治・行政のリアルが極北に存在することを実感する場所でもあります。
本社の横手方向へ視線を向けると、炭鉱へ続く鉱山エントランス(Main entrance to the coal mines)が見えます。扉自体は大きな演出はなく、静かに置かれている印象ですが、その控えめさが逆に、過去の採掘の重みを静かに物語っています。
この街がまだ現役で動いているという事実を体感できる場所です。
Lapinの旅行記:バレンツブルグ編

【地球のてっぺんで起きている知っていて欲しいこと Part2】
今回、スヴァールバル諸島を訪れた最大の目的、それはある人に会うこと。
きっかけはNew York Timesの記事。
スヴァ―ルバル諸島の住民はノルウェー人に次いで多いのがロシア人とウクライナ人。厳しい自然が支配する世界の最果てで暮らすには、国籍など関係なく、助け合わうことが必須。
そうやって何十年もあらゆる国の人々が平和に仲良く暮らせるようにしてきたスヴァールバル諸島の状況に、終止符が打たれる危険が生じているという。

発端はスヴァ―ルバルのロシア総領事が、ウクライナ侵攻について「ノルウェーの報道機関が流すのはほとんどがフェイクニュース」と発言したこと。
この発言に驚き、怒ったスヴァールバルの観光局は、ロシアの石炭採掘企業が運営している採炭の町、バレンツブルクのロシア国営事業へのボイコットを呼びかけた。

ロングイェールビーンから50㎞ほどのところにあるバレンツブルクは、事実上ロシアのプロパティで人口約370人、その3分の2はウクライナ人だという。
行き来するには、スノーモービルか船のみ。そんな僻地にあるバレンツブルグの炭坑作業員のほとんどは、2014年にウクライナ軍と親ロ派の武装勢力の武力衝突が始まったウクライナ東部ドンバス地方から来ているそうだ。

ロシアに対する制裁を受けるこの町に、ロシア人と侵攻の原因の1つでもある地域のウクライナ人が今も肩を寄せ合い暮らしているのは少し皮肉に感じる。
どこででも、政治への意見はいろいろなリスクが伴うため多くの人は政治的なインタビューには応じない。そんな中、New York Timesの記事にはプーチンをキッパリと批判するロシア人のナタリアという人のコメントと写真が載っていた。彼女はそこで明言していた。
「次に彼を見るのは国際刑事裁判所があるオランダのハーグであってほしい。プーチンは戦争犯罪で裁かれるべきだ」と。

ロシアでは、プーチン政権に批判的な人権団体や独立系メディアを解散させるなど、言論の自由を弾圧されている状況。
そんな中、メディアに本名や写真を載せて批判をすることが怖くはなかったのか。
私がなぜ、ナタリアにどうしても会って話を聞きたかったのか、それはロシアとウクライナのことが心配だったというだけではない。私の第二の故郷でもある香港のことも気がかりだったからだ。

言論の自由、思想の自由が尊重されている今の世の中であっても、例えそれが正義や正直な気持ちであっても、政治や人権に関することは、その意見を公で話すのに大きなリスクが伴う。ましてや共産党国家に異論を唱えるのであればであればなおのこと。政治批判は命取りにもなってしまう。
心では反論していても、ほとんどの人は触らぬ神に祟りなしとばかりに口を閉ざす。

現に世界でノーベル平和賞を、とまで言われた香港の雨傘運動のリーダー、ジョシュアでさえ、無実の罪と言われながらも逮捕され、拘束されたままでいる。
香港国家安全維持法が成立し、国外の権力者でさえも彼を助けたくても助けられない。
だからこそ、プーチンを批判し、彼を次に見るのはハーグの国際刑事裁判所で、と明言しているナタリアの勇気を、あっぱれと思った。

だから、いつもは行き当たりばったりの私も今回だけは用意周到。ナタリアにどうしても会いたくてコンタクトをとり、アポイントを取り付けた。
本当は世界最北の教会、スヴァ―ルバル教会で、子どもたちやナタリアとオンラインで日本の学生たちとつなげ、世界平和について話し合うオンライン授業もしたかったけれど、スヴァ―ルバル教会の職員はノルウェーの国家公務員で構成されている。政治的な話が出る場にするのは難しいと断られた。
それでもナタリアに会えただけでも良かった。

実際に会って話をしたナタリアは、普通の明るくてざっくばらんなロシア人。自分は間違えていない、だから本音を話しただけだと笑った。
そんなナタリアに書いてもらったPeace Flagの国旗はロシア。
どこの旗を書けばいい?と聞かれたので、1番自分の大切な国を、とお願いしたら、彼女は迷わず、スヴァールバルでもなく、ノルウェーでもなくロシアの旗を書いてくれた。
そこには「世界に平和を」という意味のロシア語「Миру Мир」、そして「Russia will be FREE」のメッセージ。

フリーロシアの言葉に違和感を覚える人がいるかもしれない。
けれどロシア国民は追い詰められている。ロシアは侵攻を仕掛けた悪者ではあるが、ロシア国民が全員一致でそうしたのではない。
世界中からの制裁を受けて苦しんでいるのは、ロシアの政治家や軍人だけではなく、侵攻を批判している多くの一般人も含まれている。

学校のそばを通ると、気配に気がついた子どもたちが窓から覗いて無邪気に手を振ってくれた。
知っている?
世界制裁は、何の罪もないこの子たちの生活をも苦しめている。
彼らが何をした?

ロシアの銀行が発行したクレジットカードは、すでに国際的な制裁で機能しなくなっている。フライトの確保も難しい。国際的なスポーツの大会やイベントにも参加できない。
バレンツブルグでは、ボイコットを受けてレストランやホテルを使用しないように奨励されているため、観光客もほとんどこなくなったという。
この極地で観光業で生活をしていた人たちに、飛行機にも乗れず、カードも使えず、ここでどうしろというのか。

ナタリアのようにプーチンはアウト、ロシアのやっていることは戦争犯罪だと思っていても、ロシア人として同じように制裁を受けなければならない。
ロシア人だから、国と国民は運命共同体だから仕方がない、でいいのだろうか。一般市民に何をどうできるというのだろう。正義を訴え、国に反逆者として捉えられることが正しいのだろうか。

母国の在り方次第で個人の人生も大きく変わる。
私たちは憎しみや怒りの矛先を間違えてはいけない。
戦う相手はロシアという国家であって一般のロシア人1人ひとりではない。
世界各地で一般のロシア人への差別やヘイトスピーチ、嫌がらせが問題になっているという。
それは間違っている。

なぜ争いがなくならないのだろう。
全地球人で多数決を取れば、圧倒的多数で戦争のない世界、平和な世界を望む票が多いだろう。
世界はなぜ、多数決で決められないのだろうか。
もっと単純で簡単な世の中でもいいのにと思う。
地球のてっぺんで起こっている変化は、気候だけではなかった。
気候の変化と同じくらい深刻な問題が進んでいた。
発信するだけで何もできないことが悔しいけれど。何かを考えるとき、必ず両方の立場を考えようと思ったスヴァ―ルバル諸島。
ウクライナ戦争が早く終結することを祈っている。
そしてウクライナだけではなく、世界が一般のロシアの人々への配慮も忘れないでいることを願いたい。

学びの多かった最北の地、スヴァールバル。
Pray for Peace in Ukraine
Pray for Peace in Russia
Pray for World Peace
そして
Pray for peace in Svalbard
バレンツブルグのツアー情報

スヴァ―ルバルのツアーや基本情報は、ほぼこのサイトが網羅しています。旅行前に要チェックです。
スヴァ―ルバル公式ガイド:https://en.visitsvalbard.com
バレンツブルグ旅行のベストシーズン

観光には夏の運航期間が適しています。海上移動が安定しやすく、屋外散策の負担も軽くなります。
極夜期はフェリーの運航に制限が出る可能性が高く、スケジュール変更も考慮が必要です。
特に6〜8月頃は、明るい時間が長く、日帰りツアーでも視界がクリアなまま帰港できる点が魅力です。
バレンツブルグ旅行を楽しむコツ

・防寒レイヤー(海風対策)
・カメラ(壁画撮影に向くレンズがあると◎)。
・ツアー出港前に運航状況チェック。
・滑りにくい靴。
・ゴミは必ずふた付きのゴミ箱へ。野性動物が漁らないように注意。
街はコンパクトですが、ひとつひとつの景観が濃いので、歩くペースはゆっくりめが向いています。
バレンツブルグの観光のまとめ

バレンツブルグは「極北×ロシア文化」という唯一無二の個性を持つ街です。日帰りで訪れても印象の残り方が強く、旅の記憶に“色の濃いページ”が追加されるような満足感がありました。
壁画やレーニン像など象徴的な景観を巡るほど、その街に刻まれた歴史と生活のレイヤーが見えてきます。
Longyearbyen滞在の際には、ぜひ1日を割いて訪れたい場所です。
※当記事の情報は実際に旅した際の体験と、調査時点の情報をもとに執筆しています。
可能な限り正確を期していますが、万が一情報に誤りや更新漏れがある場合は、お手数ですが「https://tabilapin.com/contact/」よりご連絡いただけますと幸いです。確認の上、迅速に対応・修正いたします。
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